2012年9月20日木曜日

リアルに描き、探査後押し(919asahi)

スペースアートクリエーター
池下章裕さん
 太陽電池に光を受けて漆黒の宇宙をいく小惑星探査機「はやぶさ2」。コンピューターで私の描いたイラストが宇宙航空研究開発機構(JAXA)のデジタルアーカイブに登録されています。2014年度打ち上げ予定で、水や有機物を含むとされる小惑星をめざします。生命の起源に迫る試みです。
 探査機を措く場合は設計図も見ます。プロジェクトチームのエンジニアや天文学者と何度も打ち合わせて、方向や角度など実際の情報に基づいたリアルなイラストを心がけています。
 天文少年でした。太陽の黒点や土星の翰、木星の衛星の観測を長い間続けました。宇宙の絵は最初、黒い画用紙にエアブラシや絵の具で措きました。
 三菱商事に勤めていた当時、仕事で三菱重工業のロケット開発部門とつきあいがあり、宇宙開発や宇宙探査の情景をイラストにして自分のホームページで発倍するようになりました。それがJAXAの目にとまって、探査機や探査する天体のイラスト制作依頼が舞い込むようになり、03年に独立したんです。いまでは図鑑なども手がけています。
 宇宙探査への期待ですか? ぜひ地球外の生命の存在が直接わかる証拠をつかんでほしい。候補は太陽系にもあるんです。たとえば土星の衛星のエンケラドス。氷の粒や水蒸気が間欠泉のように噴出していて、地下では生命誕生のもとになった有機物をつくり続け
ている可能性がある、と米航空宇宙局(NASA)は発表しています。
 日本独自の有人宇宙探査にもぜひ挑戦してもらいたい。国際宇宙ステーションへの神給機「こうのとり」などを通じて、必要な技術は部分的にはすでに獲得しています。石橋をたたいてもわたらないような姿勢では、宇宙開発で中国ばかりか、インドやブラジルに
も後れをとるでしょう。
 問題は予算ですね。政治家は情報収集衛星とか実用的な宇宙利用にばかり目がいきがちです。「はやぶさ」は小惑星の表面物質を持ち帰る成果を上げたのに、今年初めに国のゴーサインが出た後継の「はやぶさ2」は予算が圧縮されました。メディアも「はやぶ
さ」のようにドラマがあると注目しますが、宇宙探査に関心が薄いのでは。
 太陽系の外にも最近、地球型の惑星が見つかっています。その要も描いていきたい。夢のある将来に向けた挑戦に理解が進むよう、私のイラストがお役に立てば、と思っています。(聞き手・磯田和昭)

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