2010年8月29日日曜日

体験イベントも夏を過ぎ、秋へ突入!

「美術学科」の体験イベントも夏の部を終了し、秋へと突入です。
先日二日続きで行われたイベントの様子をアップしておきます。
●「画面は世界である」
アトリエから幾つかのモチーフを持ち出し、講座が行われる教室へ移動し、
担当講師の亀井先生の指示のもと、モチーフが組み合わされます。
全ての可能性をその内に秘めているタブラ・ラサ(白紙)に、一本の線が引かれることで、
画面は確実に一つの世界を持ち始め、自立していくのです。
そのプロセスこそが、モチーフと作者と平面との間の、絶えることのない関係のせめぎ合いとなります。制作中の参加者の様子をスナップ。

●「変幻自在、顔は幾つもある」
かつてキュビズムに於いて、ピカソ、ブラックなどが盛んに解析、解体、抽象、再構成を繰り返して制作して来た作品をベースに、参加者は与えられた資料をもとに作品化へと励む。
形態の解析に止まらず、内なる多面性、内なる怪人二十面相の出現をも目論んでいましたが、
いかんせん短い時間での作業、なかなか思うようにはならず、描き手本人が誰なのかさえ解らなくなる、奇妙な体験をした参加者でした。

「美術」は奥が深いのである!

2010年8月23日月曜日

8月27日(木)サマーオープンカレッジのお知らせ

「変幻自在、顔はいくつもある」担当講師:菅原優

 美術史の流れの中で、ピカソ、ブラックなどによって始まった「キュビズム」は、今までの美術とは、方法論も認識論も大きく変わる転換点であった。ルネサンス以来の「視の枠組み」遠近法を、自由に組み直したとも言える。
 この講座では、ある人物の異なる側面からの写真をモチーフに、キュビズムの方法を契機として、平面作品に制作したい。人間はキュビズムを持ち出すまでもなく、もともと、変幻自在の怪人二十面相なのです。ならば、絵の中だって、多重人格になったって当たり前なのかもしれない。

8月26日(木)サマーワークショップのお知らせ

「画面は世界である」講座担当:亀井清明

 タブラ・ラサ(白紙)には全ての可能性が秘められています。
目の前に組み合わされたモチーフをもとに、まだ何も描かれていない画面に描き手が一本の線、一滴の絵具を加える度ごとに、画面には世界が出現していきます。



画面とは一つの世界なのです。

描き手はその世界の創造に立ち会います。



モチーフと描き手と画面とが、作品を制作するプロセスの中でせめぎ合い、一つの世界が出来上がります。



2010年8月22日日曜日

代々木に発症した「噂の遠近法」の真実は・・・

体験イベントも過酷な暑さの中、半分を過ぎ、残す所あと数回となりました。
サマーワークショップのスナップを撮っておきましたので、アップしておきましょう。

講座名は「噂の遠近法」。ワークショップに参加した4人がそれぞれキャラクターの設定、状況の設定、事件の発生、最後の結末を、時間を限定して一枚の画面に順繰りに廻しながら、描いていくと云う方法。画材も技法も自由ながら、1カット45分で仕上げなければならず、始めのうちの余裕はいつしか、真剣な沈黙の中の集中へと昇華していくのでした。そうして4コマの"神話"が完成した時の、涙を流さんばかりの大爆笑をもって、ワークショップは大団円を迎えたのでした。参加者もきっと高揚した気分で教室を後にしたのではと思います。いずれその「噂の真実」はどこかにアップされることと思います。乞うご期待!!!

2010年8月21日土曜日

Kバレエカンパニー 「New Pieces」(818asahi)


若手作品集め新境地


 古典作品に定評のあるKバレエカンパニーが、気鋭の若手日本人振付家の新作を集めた公演を行った(1日、東京・赤坂ACTシアター)。
 「戦慄」は、ハンブルク・バレエ団で活躍後、カナダで活動する服部有吉の作品。シューベルト「死と乙女」に乗せ、純粋無垢な乙女(SHOKO)が闇にうごめく男たちに慄き、魅惑される姿をドラマチックに見せた。
 「Evolve」の長島裕輔は、ステイーヴ・ライヒのミニマル音楽を使い、クールで幾何学的な美を構築。無音の舞台に女性(松岡梨絵)が現れ、危うい均衡を保ちつつ緩やかに空間を切り拓いていく印象的な幕開けから、12人の男女のソロ、デュオ、トリオが、反復とずらしと共に絶え間なく踊り、観客に視覚と聴覚が溶け合うかのような快感を与える。幕切れにはダンサ
ーらが力尽きたように一斉に倒れるユーモアも。優れた音楽性とセンスを持つ、今後が楽しみな振付家だ。
 中村恩恵の「Les−FleursNOirs」は、どこか東洋的な厳かさと官能をたたえたデュオ。明暗の対比の美しい舞台と衣装、静謹なジョン・ケージから甘美なパーセル、荘厳なバッハヘと音楽が移る合間に、ボードレールの詩が朗読される。
 装置、衣装、音楽が極限までそぎ落とされ、物語に奉仕することを止めたダンスは、その純粋な美しさで観る者の心を打つ。無比の正確さで音を捕らえる熊川哲也のクリアな動き、しなやかな回転や跳躍は、地上の存在は象徴のレベルで照応し調和するというボードレールの美学とも重なる。通奏低音を奏でるような中村の澄んだ動き、抑えた情念も素晴らしい。
 派手さはないが、新境地を求めるカンパニーの気概を感じる魅力的な公演だった。
 (岡見さえ・舞踊評論家)

「空想の建築」精密な描写(816asahi)

画家・野又穫さんが大規模個展

 太古に夢想されたような「空想の建築」の描き手として知られ、本紙朝刊文化面の今年の新年連載「新・大きな物語」への挿絵提供も手がけた画家・野又穫さん(54)。その大規模な個展「もうひとつの場所−野又穫のランドスケープ」が29日まで、群居県高崎市の県立近代美術館で開かれている(23日休館)。
 現在の作風に至る前の初期作から、新作まで100点以上。図録も青幻舎から書籍として発売されている。

 とりわけ、大作の絵画を集めた第2展示室が壮観だ。帆や羽根車で風を受ける建築、気球を備え浮かび上がりそうな建築、そして、巨大な温室を備えた建築。射程の長い空想力に基づくのに、建築史家の藤森照信さんがお墨付きを与える、建築構造と細部へのセンスも備えている。細いワイヤやぎらついた壁の質感から、大空を流れる雲までを描き分ける精密な描写力があっ
てこそだろう。
 ごく一部の初期作を除き、人は登場しない。どの時代のどんな場所なのかも分からない。いわば「どこでもない場所」。人間が作り出したものはもとより、土地や水も所有の対象となるこの時代に、空想力だけは他人に所有されない自由と解放感がある、と改めて思わせる。
 酷暑の夏。野又さんの空想の建築の前に立つと、世俗から遠く離れた風が吹いてくるような感覚がある。
      (大西若人)

2010年8月12日木曜日

8月21日(土)サマーオープンカレッジのお知らせ

「イラストレーションを視野に入れて・・・」 担当講師:建石修志

「絵を描く」と言うことでは同じ絵画とイラストレーション、画材的にも技法的にも同じようでありながら、その実、大元の考え方には大きな違いがあるだろう。美術とイラストレーションの違いを理解しながら、美術からイラストレーションへのアプローチを考えたい。

 画家でもあり、イラストレーターでもある講師の建石修志の平面作品、書籍の装画、雑誌の挿画を参考資料として提示し、仕事の上での違いを理解してもらいたい。





8月20日(金)サマーワークショップのお知らせ

「噂の遠近法」 担当講師:菅原優

 噂(虚のコミュニケーション)が伝播してゆくシステムを利用して、ヴィジュアルなイメージの読み取り(受信・解読)と展開(想像・送信)を、数名で共同製作の形で制作します。小さな噂話のパーツが人々の想像力によって肥大し、変形し、歪曲されていく中で、確かな「物語性」を獲得してゆくプロセスは、神話創世の構造と軸を一にするのかもしれない。
 ここでは、1.キャラの想定→2.状況の設定→3.展開(事件の発生)→4.結末(おち)の4コマに場面を分け、受講生によって、送信・受信を繰り返し、夏の一日、この場で発生する「噂」の行く末を眺めよう! 

※以下作例
〈1〉
顔が月と太陽の2面性で成り立っている。
世界との違和感の為、顔に刺のような突起物を持つ。
何故か盛装をしているが、ポケットに受け取ったのか、これから出すのか不明の封書を持っている。
左手は指6本、右手は指4本で、その右手に赤白斑模様の絵筆を持っている。


〈2〉
空のある部屋。
額の中にも空の絵が、室内にも関わらず白い鳩が飛んでいる。
机の上にいる月と太陽の顔をもつ人は、その筆で何を描くのかはまだわからない。
わかるのは謎の封書が謎な事。


〈3〉
伝書鳩に運ばれた封書は、ある男のもとに届けられた。
その男がやってくる。
顔はキャンバス、背中に鞄、丸められた紙、イーゼルに筆も持っている。
彼の顔は自由に描き替えられるようだ。
彼は一体何者か?
彼は赤い絵具を差し出した。


〈4〉
念願の色を手にした男は、引き換えに「壁の絵」を男に渡す。
絵の下から描きかけの絵が姿を現す。
男は早速、制作に取りかかる、男は絵を包み何処かへ消える。

2010年8月8日日曜日

8月10日(火) サマーオープンカレッジのお知らせ

「身体はパーツの集合でもある」 担当講師:原田崇

 1970年代になって、盛んに行われるようになった石膏による直取り。
 方法に違いはあるが、ジョージ・シーガルによる虚無と倦怠に取り囲まれた彫像たちは、いまだに見るものに衝撃を与えます。それは投げ出された人間存在が、孤独な物体として認められるからだろう。彫刻と言う彫刻家による「主体の美術」ではないのです。また人体を断片としてみると、また全く異なったフェティッシュな衝撃が伝わってくる。

 ここでは、受講生のそれぞれの手を、成形剤コピックを使って、直取りする。
フェティッシュなオブジェとして自らの手を見直してみよう。





新訳イソップ物語


美術学科主任建石修志が参加する展覧会のお知らせです。
東京イラストレーターズ・ソサエティ主催
182人のイラストレーターが描く
新訳イソップ物語
誰もが知っているイソップ物語をイラストレーター182人が
独自の解釈と技法で作品化、読み取りと発信、さて如何な作品に…。
美術とイラストレーションは近親関係。
それぞれの作家がどのように読み取り、如何にして作品化しているか、
その辺りも興味があるところ。
是非ご高覧の程を…。
2010年8/23(月)~9/17(金)
11:00am~7:00pm 祝日休館 入場無料
クリエーションギャラリーG8
銀座8-4-17リクルートGINZAビル1F

奇想天外立体作品が新鮮(728asahi)



「羊ユー・スピーク」展 ロンドン

 ロンドン南部の新サーチ・ギャラリーで、久々に大規模な英国現代美術展「ニュー・スピーク」(第一部10月17日まで)が開催され、話題を呼んでいる。
 ここは大事広告会社の創業者で世界有数の美術収集家、チャールズ・サーチ氏(67)の個人ギャラリー。1990年代にYBA(YOungBritishArtists)と呼ばれるセンセーショナルな作品の展示で静議を呼ぶ一方、ダミアン・ハーストらを国際舞台に押し上げた人物だ。
 ギャラリーは85年に開館し、2008年に旧陸軍兵舎を改装した今の建物に移転。ロンドンの新名所として人気を集めている。
 「ニュー・スピーク」は、オーウェルの小説「1984年」に出てくる架空の書斎。今展では、美術家によって拡大・増殖する新しい視覚言帯を見せる意味を込めたという。地下も含めて4フロア、13展示室のほとんどを使い、戌が最近収集した、年齢も知名度も様々な英国在住の29人の油絵や立体作品がゆったりと展示される。
 今回も蛍光色を使ったテンペラ画など奇をてらった作品もある。が、サンデー・タイムズ紙は「刺激的で、サーチ氏の展覧会では過去最高のもの」と辞した。全体に芸術性は高く、もう見尽くしたかと患った英国現代美術界に、まだこんなにたくさん才能に恵まれた美術家がいたのかと思わせる。
 中でも、積み上げた300個のスピーカーから瞑想的な音が流れるジョン・ワインのインスタレーション=写真上=、大きな紙袋などで作ったカーラ・ブラックの彫刻、2脚のいすの上に女性が死体のように横たわるゴシュカ・マクガの不思議な彫刻=写実下、いずれも筆者撮影=など、立休作品が新鮮だ。
 サーチ氏は今月、所有する美術品約200点とギャラリーを引退時に国に寄付したいと発表し、国民をあっと言わせた。政府側は歓迎の意を表している。氏にはこれまで、収集品を芸術と見なさない保守紙や美術家から、常に懐疑的な声があった。だが、新政府による文化予算の大削減を控えた今の英国で、人々は慈善事業家としての彼に敬意を払い始めている「
    (ライター・菅伸子)

2010年8月1日日曜日

8月5日(木) サマーオープンカレッジのお知らせ

「多層構造-混合技法の世界」 担当講師:建石修志
 フランドルの画家ファン・エイク兄弟によって完成された「油彩画」の構造を源とし、ウィーン幻想派によって現代的な方法として蘇った「混合技法」の方法を、そのプロセスを具体的に紹介しながら、脈々と続いている油彩画の真の魅力を目の当たりにしよう。利便さに樹脂絵の具が全盛となっている現在ですが、画材としての油絵の具の理解と、可能性に目を向けると、平面作品としての油彩とテンペラ絵の具による混合技法が、物体としての存在感を持ちはじめ、絵柄としてのイメージの先鋭さに質的魅力を得ることだろう。

 テンペラ絵の具の不透明性、油絵の具の透明性、不透明性と透明性の多層構造が、人間の視覚の構造と同じであることの面白さ。
画材を考える上で必要不可欠な「メディウム」についても理解したい。

・支持体 シナベニア、Kケントボード、

・有色下地(リキテックス)

・インプリミトゥーラ(テムペラ・アキーラ)

・下層描き(油彩 不透明色)

・モデリング(テムペラ)

・中層描き

・上層描き