2010年9月14日火曜日

アートで探る私の属性(901asahi)

クリエーター・佐藤雅彦さん企画




記名、身体測定…「注文の多い」展覧会

 クリエーターで東京芸大教授の佐藤雅彦さんが企画した「これも自分と藷めざるをえない」展は、ちょっと変わった展覧会だ。何しろ、作品を体験するために自分の氏名や身長体重だけでなく、指紋、瞳の虹彩といった個人情報の最たるものまで捏供しないといけないのだから。最先端の科学技術を表現に活用し、佐藤さんが「自分がまだ分からないもの」に挑んだ展覧会でもある。       (西田健作)

 展覧会は東京ミッドタウン(東京都港区赤坂)にある「2121デザインサイト」で開かれている。ディレクターの三宅一生さんの「来場者が大いなる疑問を持ち帰るような展覧会をして欲しい」という注文を受けて企画した。
 佐藤さんは、子どもの考え方を育てる番組「ピタゴラスイッチ」 (NHK教育)を監修して
いる。「これまでは、自分の申で一度解決したものを多くの人に分かるような形にしてきた。
今回は、自分でもまだ何だか分からないけれど面白いものを見せようと考えた」と話す。選ん
だテーマが「属性」だった。
 科学の進歩で、虹彩や静脈といった身体的な属性を正確に抽出できるようになってきた。今
回は名だたる企業の協力を得て、展示した22作品の大部分に生体認証の最先端技術を使って
いる。半数が佐藤さんが選んだり、作家に制作を依頼したりした作品で、残りの半数は自らが
制作にかかわったものだ。
 「注文の多い」展覧会でもある。希望者は入り口で氏名を入力し、身長体重を計る。センサ
ーを手に持ってひと筆書きで星を描いたあとに、鹿の虹彩も読み取られる。
 最初の展示作晶は「指紋の弛」。懲証センサーに指を置くと、自らの指紋が魚のように泳
ぎ出し、群れの申に入る。もう一度指を置くと、指紋は自分の所に戻ってくる。カメラが「男
性/女性」 「29歳以下/30歳以上」を判断する「属性のゲート」や、星の描き方で個人を特
定する「ふるまいに宿る属性」など、磯城はあの手この事で鑑賞者の属性を読み取ろうとする。
 企画当初、佐藤さんが考えていた展覧会の題名は「これもまさしく自分である」という積極
的なものだった。
 だが属性に対する人の反応は、当初の想像とは違っていたという。「人間は自分自身や自
分の属性にすごく無頓着だ、ということが分かってきた」。会場では、「金魚が先か、自分が
先か」や「座席番号G−19」といった作品を通じて、この意外さを体感できる。
 他方、属性を管理される怖さを実感できる展示も。「204只」は虹彩で個人を識別する。
精度が高く、虹彩の画像データの一部を画面上で消しても「まだあなたです」と特定され続け
る。
 生体認証の技術開発は今後も進むはずだ。そのとき私たちは、どのようにして自分を自分
と認識するのか−。「分からないもの」に挑む同展は、自分というものの固有性について考
えさせる刺激的な内容になっている。
 ◇11月3日まで、11月2日以外の火曜休み。展覧会について佐藤さんが青いた『属性』 (求
龍堂)も刊行。

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