2010年6月15日火曜日

奈良美智、陶芸に挑む(609asahi)


 にらむような目をした少女の絵で知られ、現代美術の第一線で活躍する奈良美智が、陶芸に
挑んだ。その成果を「奈良美智展−セラミック・ワークス」と題し、東京の小山登美夫ギャ
ラリーで発表している。
 7センチを超える立体が計5点、最も大きな立像「White Riot」は高さ約2.8メートル。どれも奈良が自らの手で粘土を積み上げ、制作したやきものだ。
 2007年から、滋賀県立陶芸の森(滋賀県甲賀市債楽町)に繰り返し滞在し、やきものを学ん
だ。陶芸作品をメーンに発表するのは今回が初めてとなる。
 奈良はこれまで、発泡スチロールを削って立休作品の原型を作り、繊維強化プラスチック
(FRP)の作品として発表してきた。だが、陶芸は発泡スチロールと比べると格段に制約が
多い。
 作品は、ひも状の粘土を積み重ねる「ひも作り」。下の段が乾く前に積み重ね過ぎると重み
で形がひしゃげ、乾かしすぎると今度はくっつかなくなる。しかも、焼成すると体積が6%ほ
ど縮む。
 だが作品からは、奈良がむしろ制約を楽しんでいるように見える。例えば、金彩の「おたふ
く1号」は、その名の通り顔が下膨れに。頭の部分が縮みすぎたためで、バンダナを巻いて昧
とした。プラチナ彩の「おたふく2号」では均整がとれ、技術の習熟を感じさせる。
 わずかに目を開いた状態の「森子」=写真=には、内と外の世界を同時に見つめる仏像の
ような存在感がある。ほかに、奈良が絵付けをしたつばなども。
 絵画での評価を確立して以来、アトリエを模した小屋をgrarと共同制作するなど、制作の幅を広げてきた。やきものもその一つだが、余技に見えないほど力がこもる。かわいいけれど寿がある奈良ならではの作品を見ることができる。(西田健作)
 ▽19日まで、東京都江東区清澄1の3の2。日曜、月曜休み。

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