2010年5月30日日曜日

iPad



 先日鳴り物入りで発売されたiPad、徹夜で銀座アップル社前に行列して購入のニュースが、TV、新聞あらゆるメディアで紹介されている。iPodに続くアップルの新製品位に眺めていたのですが、どうも何か様子が違うように考え始めた。小生(cabinets)元々の機械音痴、PCを使い始めて10年を越しているのですが、どうも元々のところが理解できていない様で、時々とんでもない事態に陥ったりもするのです。PCをツールとして考える、とよく耳にしていたのですが、そうではない、確実に今までとは全く違うメディアなのだ、とはズゥーと思っていたのです。
 そこでiPadの発売です。様々な状況での利用が考えられるようですが、小生にとっての一番の関心事が「電子書籍」。4.5年前にも端末を使っての小説のイラストレーションの連載仕事をした事もあったのですが、未だシンプルなものでした。このiPadの出現で、少なくとも出版業界は何か大きな転換点に立ち向かわざるを得ないのでしょう。書籍、雑誌など、紙を媒体としたメディアは、一体どういう事になってしまうのか、正直不安でもあります。

先日、知人のアーティスト蓜島庸二氏の展覧会「グーテンベルク炭書/文明の始原に向けて」にお邪魔しました。このところ「グーテンベルク炭書」のシリーズで展覧会をしていらっしゃいますが、膨大な量の書物を、特殊な方法で焼き上げ、まさに「炭の書物」として発表しているのです。実に刺激的なオブジェ作品です。書物を焼くと云うと、ブラッドベリの「華氏451」を思い浮かべてしまいますが、SFの、小説以上に説得力のある力を目の当たりにしたものでした。紙と活字を使って、グーテンベルクが考え出した活版印刷術、「知の象徴」としての書物の終末と再生。氏の書物へのオマージュ作品は、実にいろいろな事を考えさせるものでした。
ITに取って代わられようとしている「書物」。

朝日新聞の「天声人語」に次のような記事がありました。

 旅に出る鞄に一冊の本をしのばせる。だが、巡る先々の楽しさに気もそぞろとなり、なかな
か活字に集中できない。<本の栞少し動かし旅終る>。近江砂人の川柳は、誰にも覚えがあろう一コマを切り取って微笑を誘う▼先の小紙俳壇には、日原正彦さんの(春風が十頁ほど拾ひ読み)があった。読みかけを風がめくる。夏の木陰にはミステリーもいいが、春風には恋愛短編集が似合いそうだ。だが某にせよ風にせよ、紙の書物ならではの光景が、やがては過去の感傷に遠のくかもしれない▼米国生まれの新型情報端末「iPad」が、鳴り物入りで売り出された。週刊誌大ながら様々な機能や可能性を満載している。中でもネットで買って読む「電子書籍」への関心は高い。先行する米国では「紙の本はもう買わない」という人が増えているそうだ▼品ぞろえが充実すれば、これ一台で行く先々が「書斎」になる。読書革命ともいえるが、旅の鞄に一冊だけをしのばせるのも捨てがたい。書店の棚からお供の一冊を選ぶのも、本好きの楽しみのひとつである▼今後は「電子」の猛攻に「紙」がたじろぐ図となろうか。とはいえ書物そのものにこだわる人は少なくない。詩人の堀口大学が、「僕は殺すと云われても、万葉集や古今集を革の装幀に仕立てる気にはなれない」と述べていたのを思い出す▼内容と外見が調和してこそ名著、という感覚だろう。いわゆる愛書家である。仕事柄、わが紙への愛着も」ひとしおだが、選択肢が増えたのを歓迎したい。食わず嫌いはひとまずおいて。

また別の記事でも

電書協、1万点販売

角川、秋にも新刊

 国内の主な出版社31社でつくる日本電子書籍出版社協会(電書協、代表理事・野間省伸講談社副社長)が、加盟社の電子書籍約1万点を、28日から発売されたアップル社の多機能携帯端「iPad」で販売する。今秋からの予定だ。電子書籍端末の魅力は、コンテンツ(作品)の品ぞろえにかかっており、約1万点の一気のラインアップは・iPad側にもメリットがある。
 対象は、電書協が直営する電子書店「電子文庫パブリ」でパソコンや携帯電話向けに売っている電子書籍。いずれも加盟社の既刊書で、2万点のうち当面は半数ほどを投入する。最多価格帯は500〜600円で、1Padでも同額で販売する。
 ラインアップには佐伯泰英さんの「居眠り磐音 江戸双紙」シリーズ、坂東眞理子さんの「女性の品格」、浅田次郎さんの「蒼考の粛」などベストセラーも多く含まれる予定だ。これに先立ち6月から・1PhOneでも販売する。将来は、・iPadだけでなくほかの電子書籍端末でも、条件が合えば販売していくことになりそうだ。一方、角川書店も独白に・⊥Padなどの電子書籍端末に向けて新刊や既刊のベストセラー、ライトノベル、漫画など数十点を、秋にも同時に販売即焔配鮎…妃謂姻の「天地明察」が有力候補になっている。他社との差別化を狙い、映像と電子書籍を組み合わせたり、ミニゲームから電子書籍に誘導したりする仕組みも作る。井上伸一郎社長は「遊びのノウハウから入って、本に導くような仕掛けを考えたい」と話す。(西秀治)


小生もiPadには興味津々なのですが、やっぱり紙の書物の魅力をいつまでも大事にしたいのです。「書物とは、まず手触りだ」とかって或るところに書いた事を憶い出します。

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