2013年8月2日金曜日

大竹アート熱風トリプル(731asahi)

香川県内3カ所で大規模展示
廃棄物・記憶多彩に

 絵画や立体から写真、スクラップブックまで、多彩かつ旺盛な活動を続ける現代美術家・大竹伸朗(57)がこの夏、熱い。イタリアで開催中のベネチア・ビエンナーレに続き、香川県内3カ所で同時に作品を発表しているのだ。大規模な回顧展と新作・近作の展示が二つ。濃密でエネルギッシュな作品世界を展開している。
 大竹は、「既にそこにあるもの」と呼ぶ既成の事物、それも廃棄物やゴミ、見捨てら
れた風景といったものに感応し、積極的に作品に取り入れてきた。ベネチアに出展申
の、古雑誌やチラシなどを貼り込んだ「スクラップブック」シリーズが代表作だ。
              
 高松港から船で約20分の女木島に設置された新作「女根/めこん」も、その延長上に
ある。休校中の小学校校庭に立つオレンジ色の巨大なブイ(浮標)。頂上にはヤシの木
が植えられ、足元では鉄板で覆われた小屋に樹木の根や様々な植物が貼りつく。ブイは
大竹が拠点とする愛媛県宇和島市の海岸に漂着したもの。廃棄された人工物と熱帯系の
植物が絡み合い、「これまで無かったもの」に変化していくことを予感させる。
 廃棄物は、ここ数年の作品を中心とした大規模個展「ニューニュー」でも目を引く。
会場はJR丸亀駅前にある丸亀市猪熊弦一郎現代美術館。その屋上に「宇和島駅」の看
板が掲げられる。会場入り口の吹き抜けの空間には、北海道のボウリング場に設置され
ていた巨大なピンが立つ。いずれも、譲り受けた廃棄物にネオン管などを組み込み、風
雪にさらされた事物に新たな命を吹き込んでいる。
 「既にそこに為るもの」に惹かれる理由を、大竹は「記憶や時間の層が既に含み込ま
れているから。そこから新しいものを作ることに興味がある」と話す。
 「焼憶」は、自作の絵画や制作メモなどを陶のタイルに焼き付けた立休の新作。その
制作を通して、自らの作品に通底する「記憶」というテーマに改めて着目したという。
そこから組み上げたのが、高松市美術館で開催中の回顧展「憶速」だ。
 1960年代から現在までの作品534点を七つのセクションに構成。多種多様な素材とメディアを駆使し、有機的につながる作品世界を整序して見せている。
 興味深いのは「スケッチブック一日常の風景」と「貼既にそこにあるものと記憶の
層」のセクション。初公開となる、77年から現在までのスケッチブック96冊は、世界を
巡る美術家の「旅と日常」を映す。その中で見いだされた膨大な事物や風景のイメージ
が、やがて平面や立体に貼り込まれ重層的な記憶を織りなしていく。「貼」の作品群が
放つ、混沌としたダイナミズムに目を奪われる。(西岡一正)

 ▽「女根/めこん」は瀬戸内国際芸術祭2013の参加作品。夏会期は91日まで。秋は
105日~114日。「ニューニュー」展は114日まで。「憶速」展は91日まで。

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