2013年8月2日金曜日

現代アートの楽しみ方 藤田令伊(731asahi)

異なる世界への「気づき」

 前回、現代アートを見るコツとして「わからない」にこだわらず、作品に「問いかけ」てみることを提案しました。じつは、「わからない」にこだわらないことは作品に対するオープンマインドを、「問いかけ」は理性的な見方(考えること)を促すものでした。そのほか、感性的な見方(感じること)なども交えて私たちは現代アートを見、気分転換から知的刺激までさまざまなものを得ています。
 得られるもののなかでも特筆すべきなのが「気づき」です。当たり前のことですが、ふだん私たちは自分自身の価値観の世界に生きています。しかし、私の価値観とあなたの価値観は同じではありませんから、同じ時代、同じ社会で暮らしていても、あなたと私はいわば別世界にいるようなものです。にもかかわらず、私たちはそのことに気づかず、ついつい自分の価値葡でのみ物事を見がちです。
 現代アートは直感的、実感的に異なる世界の存在に気づかせてくれます。写実の作品は巨大な女性の像です。人間がただ「大きくなる」というだけで、圧倒されるものがあります。そして、彼女と自分の世界の差異に理屈抜きに気づかされます。
 多様性の時代といわれ、共存がキーワードのいま、自分とは異なる他者に気づき、共感や理解を試みるのは重要で必要なことです。現代アートはそうした時代のテーマにも「気づき」の力で応えうるものなのです。(アートライター)

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