2012年8月23日木曜日

何でも梱包した果てに(822asahi)

 カニ缶のラベルを缶の内側に貼り直したのが「宇宙の缶詰」です。写真は開封状態ですが、本来はハンダ付けで密封します。その瞬間、カニ缶の表側と裏側が入れ替わるわけです。それで、ラベルがない側、つまり私たちがいる宇宙が全部、カニ缶に包み込まれてしまうのです。

 この作品は、それ以前に続けていた「梱包」シリーズから出てきたものです。
 「梱包」作品を初めて発表したのは1963年です。友人から使用済みのカンバスを借りてクラフト紙とひもで梱包した作品を出しました。それまでもグループ「ネオ・ダダ」 (60年結成)など前衛芸術の仲間と活動していたから、(絵画や彫刻などの)安定した作品ではおさまらない。いまは見せるべき作品がないという状態を見せたい、というのが「欄包」の内的な理由でした。
 でも、やりはじめたら面白くなった。ラジオや扇風機を梱包して電源を入れて展示し
たこともあります。次は自動車をやってみようとか、ビルを欄包しようとか構想は膨ら
んでいくんですが、それは大変だし、単純なエスカレートでしかない。
 そんなことを考えてい訂ときに、「ハイレッド・センター」(63年措成)の仲間と、帝
国ホテルで「シェルタープラン」というイベントを計画し、アトラクションの一つで缶詰
を作った。ラベルのない、中身の分からない缶詰です。
 僕が作ったのは、一つは「缶切りの缶詰」。ギユウちゃん(前衛芸術家の篠原有司男さん)が買っていきました。別の画廊に戻り、缶切りがなかったから五寸釘を打ったりして苦労して開けたら、中から小さな缶切りが出てきたので、全員あぜんとしたそうです。
もう一つが「宇宙の缶詰」。サケ缶や牛肉の大和煮の缶詰もあったはずです。アイデア
がひらめいたときは「これ1個で宇宙を包んだことになるから、もう梱包は終えていい
んだ」と思った。でも、実は1個だけでは、密封された缶の中の空間は包み残しになっ
ている。2個あれば相互に缶の中の空間も包み込むので、宇宙の欄包はやっと完成する
のかな、とも患っているんです。  (聞き手・西岡一正)

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