2010年7月1日木曜日

ドクドク 人の心臓音が作品(630asahi)


瀬戸内・豊島に美術館 ボルタンスキー氏

 世界中の人々の心臓音を集める美術館「心臓音のアーカイブ」が7月19日、漸戸内海の豊島に開館する。作者は、仏を代表する現代美術家の一人、クリスチャン・ボルタンスキーさん(65)=写真上。来日した作家に、作品について聞いた。
 同氏は、無名の人の古着や肖像写真、名前などを集め、人間の生や記憶を問う作品として発表してきた。心臓音を本格的に集めたのは2006年から。「心臓は人間の雫行き着くのは自然の流れだった。心臓音は私にとって、人間の命のもろさや、はかなさのサンプルなのです」
 これまでに9カ国、1万5千人を超える心臓音を集めた。国は仏、独、日、韓、米など様々だ。「音は似ているようでどれも違う。豊島に世界中の心臓音が集まれば」 「心臓音のアーカイブ」(香川県土庄町)は、「瀬戸内国際芸術祭2010」に合わせて、直島福武美術館財団(同県直島町)が建設した。鉄骨造り平屋建て、延べ床面積138平方メートルの小さな美術館=写真下=だ。芸術祭終了後も財団が運営する。
 同館は三つの部分に分かれる。心臓音をパソコンで検索して聞くことができる視聴室、自分の心臓音を録音する録音室、メーンとなる作品展示室だ。展示室では20メートルの奥行きがある真っ暗な部屋に心臓音が響き、鼓動に合わせて電球が点滅するという。「人間が最初に聞く音は母親の心臓音。鑑賞者は胎児のような気持ちになるかもしれない」ユダヤ人でもある同氏は「アーティストの使命は、きれいなものを作ることではなく問いかけをすることだ」と話す。7月中旬には、これまでの生涯について辞しく答えたインタビューの日本帯版「クリスチャン・ボルタンスキーの可能な人生」 (水声社)も出版される。      (西田健作)

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