2010年7月1日木曜日

「改造歴史」展 北京(630asahi)




分岐路だらけの豪華な迷宮


 現代アート市場の成長、過熱とバブル崩壊を経て、中国の現代アート界でもこの10年をどう分析、評価するか、という問題が浮上した。その流れを受けて北京で6月中旬まで開かれたのが、「改造歴史(歴史を改造する)」展だ。政府の文化関連機関が主催した。
 l万3千平方メートルの国家会議センターを主会場に、中国と台湾出身の291人の絵画や彫刻、インスタレーション、写真、ビデオ作品など千点以上を見せる大規模展。張暁剛や方力鈎、徐泳、黄鋭ら1980~90年代に現代中国美術史に残る作品を発表した作家や、劉韡ら中堅作家の近作も並んだ。
 ただ、現在の中国で、大型の現代アート展は商業目的抜きには開けない。今展の開催費用は1800万元、日本円で約2億3500万円に上り、中国の現代アート展として改革開放以来、最高の額に上ったという。作品の売買も行われ、実際は市場を意識せざるを得ない展覧会に、美術史を塗り替えるニュアンスの大胆な名がついたことは、美術界の反発も呼んだ。企画した美術史家仇鄭斬氏は、この10年を「(市場経済の流入などで)外部から『改造』された一方、作家が主体的に芸術活動の合法性や自由な表現を勝ち取るなど、自ら歴史を『改造』してきた」とする。そのうえで「世界的な経済危機で、また激しい『改造』が始まっている。今は過去の作品をふるいにかけ、後世に残すべきものを見せる時だ」と話す。
 市場経済との結び付きにより、空前の関心を集めたゼロ年代の中国現代アート。だが、価値観や表現手法の多様化、行き過ぎた商業主義など、複雑な文脈の中に置かれ、近年は断片化、多元化が激しい。呂氏は「無数の展覧会がありながら運動はなく、印象的な作品が生まれても、記念碑的な作品は生まれなかった」とも話す。
 今展には、北京五輪開会式で花火の演出を手掛けた蔡国強の作品がないなど、作品の選択に残念な点がいくつか残る。膨大な数の作品群はとりとめのない印象も与えた。だが、分岐路だらけのゴージャスな迷宮の申でさまようことこそが、この10年の中国現代アートを振り返ることなのだろう。(フリーライター・多田麻美)

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