2013年4月24日水曜日

「パラモデル展」「造形作家・石田歩の世界」(417asahi)

少年時代からの妄想力

 例えば、砂山に掃ったトンネルがつながったときの喜び。現代美術の世界には、そんな子ども時代の感動を持ち続けていると思える表現者が少なくない。
 ともに京都市立芸術大出身の林泰彦(1971年生まれ)と中野裕介(76年生まれ)による
「パラモデル」は、代表格だろう。プラモデルを連想させる名前も、おもちゃの青いレール「プラレール」を床や壁、天井に曲げて伸ばして増殖させる代表作も、子ども心満載。「パラの模型」 「ぼくらの空中楼閣」という2題を掲げた東京展には一方で、知的な気配も漂う。
 前者では会場のビルを覆うガラスブロックが措くグリッド(格子)を、細いアルミパイプと方眼紙で展示室内に増殖=写真上右。部材をつないで増やしていく点はプラレールと同じだが、ずっとスタイリッシュだ。
 後者は、このビルをいわば足場に見立て、その中で「巨大な少年の建設計画」が進んでいると想定。8階の展示室は頭部が作られる位置らしく、顔の設計図が描かれた工事用のシートなどが登場する=同上左。詩的だが、根底にはやはり子どもらしい妄想力がうかがえる。
 さらに子ども心全開なのが、多摩美術大と京都市立芸大で学んだ石田歩(57年生まれ)が
京都で開いている個展で、副題は「工作少年の造形力」だ。
 達者な水彩の風景画なども並ぶが、見どころは、「トロッコ島」などと名づけられた、ジオラマ風の作品の数々だ。軍艦島さながらに黒く武骨な島にトッコの線路が巡り、ときにアナログなスイッチなども=同下。作りたくて仕方がないものを作ってしまった印象が強い。
 現実の再現ではなく、石田の記憶と夢想の産物なのだろう。そのとき呼び出されるのは、炭鉱や鉄道、コンクリート建築といった近代の産物ばかり。子どもの遊び心や妄想力と、モノづくりの近代は相性がいいのだ。
 実はパラモデルの2人も、町工場や電気工事技師といった親の職業と作風との関係について語り、展覧会の配布物にはこう記した。「そう、僕らは皆いつだって!春光溢れる空中楼閣に、遊び戯れ続ける少年のひとりなのだ」 (編集委員・大西若人)
 ▽ともに5月6日まで。パラモデル展は東京・銀座5のメゾンエルメス8階。石田展は京都
市・松ケ崎の京都工芸繊維大・美術工芸資料館(21日休み)。

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