「生」の象徴光に求めて
柔らかな光をはらんだ表現で木村伊兵衛写真半などを受けてきた写真家の川内倫子(1972年生まれ)の個展が、東京都写真美術館で開かれている。凝った展示空間に映像作品も加わり、川内作品の新たな読み込みが可能になっている。
最初の展示は廊下のように長く、その両側に「イルミナンス」と題された2007~11年の作品群が並ぶ。しかも壁も床も白一色で「神聖な空間になった。写真に見られている感じになって面白い」と川内。
ふっとした瞬間の事物を淡い色調でみずみずしくとらえる作風は健在。さらに別の展示室の新作まで、炎や鏡に反射する光、森に指す光跡といった、光源そのものを狙った作品が目立っていることに気づく。
「ますます光に向かっていると感じる。光は『生』の象徴。さまざまな事件や震災もあり、無意隷のうちに求める本能が出ているのだと思う」と話すのだ。一方、「生理的にはこちらの方が合っているのではないかと思うほど楽しかった」というビデオによる映像作品も3点出ている。
映像も光をはらみ、写真によく似ている。逆にいえば川内の写真には、時間表現である映像にきわめて近い部分があるのだ。
それは、気配や滞らぎといった、うつろう時間を画面に内包している証しともいえる。
(大西若人)
▽7月16日まで、東京・恵比寿ガーデンプレイス内の同館で。最終日をのぞく月曜休館。1日まで、恵比寿1の18の4のTRAUMAR工S・SPACEでも被災地の写真などを展示。
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