超多様に発展
現代アートはどのように発展してきたのでしょうか? 当初、現代アートは「情」と「理」という人間の二つの面を表現する二つの流れとして展開していきました(「情」の流れはマティスが、「理」の流れはピカソが代表格です)。
ところが、二つの流れは次第に入り交じるようになり、また、それらとは別の考え方の表現も現れ始めます。1950~70年代にはその儀向が著しくなり、ポップアートやミニマルアートといったさまざまな表現が乱立します。表現の方法も絵画だけではなく、映像や立体としかいいようのないものなど多彩になつていきます。
80年代以降、世の中が高度成長期のような単純な時代から複雑系の時代へと移行していくと、現代アートも混沌状況を呈します。"規範"や"標準"といったものは消滅し、現代アー
トは「中心なき時代」へと突入します。80年代以降をとくに「コンテンポラリーアート」と呼ぶことがあります。
そうしたなか、日本の現代アートはどうなっているのでしょうか?最近目立つ一つの傾向が現れているように思います。それは、物静かで非攻撃的な表現を特徴とし、穏やかさを好む日本人の心性によくなじむアートです(私はこれを「J一クワイエット」と呼んでいます)。クワクポリョウタもそうした一人です。写真は、模型列車のヘッドライトが線路脇のモノの影を次々に映し出していくというジオラマ作品です。列車の移動につれて、影のかたちや大きさが移り変わっていきます。そのさまは、世の無常など、さまざまなことを想起させます。
そんなふうに、時代を反映して超多様になっているのが、いまの現代アートです。
(アートライター)
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