2013年12月13日金曜日

胸に迫る「瞬間の幾何学」(1211asahi)

ジョセフ・クーデルカ展

 近代の芸術表現は、卓越した才能が切り開いてきたと言ってよい。写真なら例えば、美しい構図を見いだす才能や、ある瞬間を締らえる才能といったものがあるだろう。
 旧チェコスロバキア出身の写真家ジョセフ・クーデルカ(75)の回顧展も、才能のすごみを確認させるものだ。1968年のワルシャワ条約機構軍によるプラハ侵攻を撮った作品群が一昨年に垂居で紹介されたが、なぜあの奇跡のような写真が撮れたかについても考えさせられる。
 58~飢年の初期作からして舌を巻く。ある現実にレンズを向けているだけで、モダニズムの美意識に貫かれたスタイリッシユな画面が登場しているのだ。
 例えば、オフィスらしき光景の「『初期作品』から チェコスロバキア、プラハ」(飢年)=写真上。ガラス窓が描き出す格子を背景に、瓶に差された鉛筆と、机に突いた人物の脱が平行になった瞬間をとらえる。左隅で滞らぐ人影も心憎い。写真家は、冒頭に挙げた「構図」と「瞬間」という両立の難しそうな二つの才能を併せ持つ。いわば、瞬間の幾何学への才能。
 写真は通常、「いつ何を撮ったのか」といった記録性を意識しがちだが、この写真家の画面はあまりに純度が高くそれらを忘れさせる。劇場を撮った連作なら、芝居の中身よりも人間開係の本質が浮上する。ロマ族の連作でも、民族固有の問題より、人間とは、生きるとは、といった普遍性に意識が及ぶ。
 プラハ侵攻の作品が目に突き刺さってくるのも、旗を掲げ、戦車を取り込む人々に、瞬間の幾何学が働いているから心遣いない。70年に英国に亡命したクーデルカは、自身と重ねるように流浪者をテーマにした連作を手がけている。「『エグザイルズ』から アイルランド クロー・パトリック巡礼」 (72年)=同下=といった一枚でも、人物と杖の織りなす幾何学を瞬間的にとらえつつ、それぞれの人物の内面すら漂わせている。
 86年以降は、廃虚などの風景を極端に横長のパノラマカメラで撮り続けているが、これもまた構図への意志のゆえだろう。
 胸に迫る「瞬間の幾何学」に貫かれた作品群を見終えた後、2年前の東京で聞いたクーデルカの言葉を思い出していた。「見極める目を持った写真家なら、どんな場所でも美は見いだせる」  (編集委員・大西若人)
 来年l13日まで、東京国立近代美術館。12月16、24、28日~ll日、6日休館。

名画を内から読み換える(1204asahi)

森村泰昌展「ベラスケス頌」「レンブラントの部屋、再び」

 絵画の登場人物になりきった写真作品で知られる森村泰昌(62)が、名画をいわば内側から読み換える独白のアプローチをさらに深化させている。
           
 新作「ベラスケス頌侍女たちは夜に甦る」の対象は、スペインの宮廷画家ベラスケスの代表作「ラス・メニーナス」。幼い王女を中心にした侍女や小人の群像と絵筆を手にしたベラスケス自身を措く。画面の事前にいると想定される国王夫妻が背景の鏡に映り込むなど、絵画空間の複雑な構成を巡り、様々な読み解きがなされてきた。その名画の世界を、森村が登場人物に扮した大型写真8点による「一人芝居」として展開している。
 舞台はマドリードのプラド美術館。「ラス・メニーナス」がある展示室に森村がたたずむ=写真上。場面が変わると、ベラスケスが絵画から抜け出して展示室に立つ。やがて王女らが展示室に現れる=同中=など、登場人物が絵画の内と外を往還するうちに、「ラス・メニーナス」は森村が全登場人物に扮装した異貌の絵画へと転じていく。
 鑑賞者は各場面の差異を確かめながら会場を巡るうちに、絵画の内外からの視線が交錯するという、原画の謎めいた構造を身体的に経験する。知的な構想を榔敵な写真で具現した作品は、上質なエンターテインメントとしても楽しめるだろう。
 別の会場で、1994年の個展をほぼそのまま再現した「レンブラントの部屋、再び」が開
催中。こちらの作品では、オランダの巨匠レユプラントの自画像に森村が扮している=同下。
 レンブラントは生渾にわたって約60点の自画像を措いたという。森村は、若き日から画家として成功した壮年期、借金と破産に苦しむ後半生へと「画家の一生」を追う。新作が絵画空間の謎に挑んだとすれば、こちらはレンブラントに重ねて「私」という謎に迫っている。
 80年代半ば、ゴッホの自画像から始まった森村の「名画シリーズ」は、すでに四半世紀を超す歴史を刻んでいる。今回の2展は、その表現の深化と達成を改めて認識する機会となっている。     (西岡一正)
▽「ベラスケス」は25日まで、東京・銀座の資生堂ギャラリー。曜休館。「レンブラント」は23日まで、垂屏・北品川の原美術館。最終日を除く月曜休館。

星蝕の夜















美術学科主任建石修志が参加している展覧会のお知らせ

12/12~29
大阪 書肆アラビク
北見隆・山本じん・建石修志 会が、オブジェ30点程の展示


BOX OPERA fig=植物學

美術学科主任建石修志が加わっている展覧会

私の劇場2013

美術学科主任建石修志の参加している展覧会のお知らせ。

2013年10月31日木曜日

少年とウサギ展

美術学科主任建石修志も4点を出品しています。



2013111日[金]~2013122日[月]
月~金/13:0020:00 土日祝/12:0019:00
入場料:500
展覧会 会場:parabolica-bis[パラボリカ・ビス]
東京都台東区柳橋2-18-11 ■TEL: 03-5835-1180 map

再び、幻想の季節へ。夜想の密かな願いを「少年とウサギ」というテーマに託し、この六年の夜想とパラボリカ・ビスを支えてくれた作家たちに作品をお願いした。
この展覧会から、夜想とパラボリカ・ビスは、一歩を踏み出す。作家たちのイマジネーションに助けられて、展覧会から新たな息吹が始まる、そんなことがあっても良いのではないかと思う。二〇一〇年代以降の幻想は、古典的な幻想の良さをルネッサンスしながら、新しい源泉から生まれる目を見張るものになって欲しい。いや、この一歩を期にゆっくりと進んでいきたい。(今野裕一)

2013111日[金]~20131125日[月]
[第一会場]mattina/コーディネイト:今野裕一
建石修志/七戸 優/鳩山郁子/妖/横田沙夜/中川ユウヰチ/オカムラノリコ/中川多理/LIEN/三上鳩広
2013118日[金]~2013122日[月]
[第二会場]nacht/コーディネイト:篠塚伊周
土谷寛枇/神宮字光/中川多理/槙宮サイ/ヒラノネム/吉田美和子
20131115日[金]~2013122日[月]
[第三会場]Quartier blanc/コーディネイト:北見和義
PAPANDA's Collection


★[第一会場]mattinaに、三上鳩広さんの参加が決定いたしました!

貨幣に宿る夢と絶望

平野正樹写真展

アベノミクスの喧噪の陰で、国債暴落による財政破綻のリスクが懸念されているという。世界の歴史には、財政破綻がハイパーインフレーションを招き、預金や資産が失われた事例があまたある。その衝撃を映像化した写真家・平野正樹の「MOney」シリーズが、埼玉県東松山市の「原爆の図丸木美術館」で展示されている。
 平野が注目したのは、大日本帝国の崩壊によって紙くずと化した紙幣や債券の類い。
実物の表裏両面をスキャナーで読み取り、大型プリントで細部まで克明に見せる。「戦
時貯蓄債券」や「徴兵保険証書」が戦時下の内地の状況をうかがわせる一方で、「満州
中央銀行券」やマレー半島で日本軍が発行した「百ドル札」は、アジアに版図を広げ
た日本近代史を思いがけない形で想起させる。国家が瓦解すれば、紙幣は価
値を失う。自明の理だが、おばろげな背景に浮かぷ紙幣の鮮明な像には「紙くず」にと
どまらない生々しさがある。例えば、ぽろぽろの「朝鮮銀行券」には日本統治下の庶民
の夢と欲望、憤怒と絶望が染み込んでいるかのよう。貨幣と私たちとの名状しがたい関
係がそこに潜む。
 平野の個展「Afterthe FaCt」 (119日まで)に出品。同展には他に、サラエボ内戦後に残った弾痕を抽象画のようにとらえた「HOleS」、東ティモールで焼き払われた民家の窓をモチーフとした「Windows」など、現代史の痕跡を追ったシリーズも含まれる。     (西岡一正)