原点見つめ自分を再編集
現代美術の世界に確かな地歩を築き、今も旺盛な活動を続ける美術家の森村泰昌(60)。そんなの鬼才のこれまでの足跡を確認できる展覧会が、静岡県内で重なっている。振り返った時、どんな風景が見えるのか。
静岡市美術館で6月10日まで開催中の「森村泰昌モリエンナーレ」は、森村が「肖像(ヴァン・ゴッホ)」 (1985年)でセルフポートレートの手法を編み出すまでの習作や未発表作などと、当時影響を受けていた作家の作品を対で並べる。
展覧会は森村自身が企画した。ある時はデュシャン風、またある時は宇佐美圭司を思わせる線描、横尾忠則のアクリル画の横にはサイケデリックな抽象画……。高松市美術館に所蔵品を使った展示のプロデュースを依頼され、その所蔵品リストを見るうちに思いついたという。
「当時は他人の影響ばかり受けているので、あかんと患っていた。バラバラな自分がばらまかれた状態」と森村。「『ゴッホ』はそれまでの自分は忘れてスタートしていくんや、というつもりだった」と振り返る。
過去の自分を見せる心境になれたのは、最近だ。「ゴッホ」以来、写真の中で泰西名画の登場人物や女優、20世紀の権力者と様々な人物になりきってきた。その過程で「やっているのは1人の自分。いっばいある『私』を束ねるもう一つのF私』がある」と思えてきたという。
「ゴッホ」以降の作品と共に展示の最後を飾るのは、「何かを着ることで逢うモノになった、自分の大先輩と呼ぶ、田中敦子の「電気服」 (56年)を基にした映像作品だ。
「美術活動をしていると、だんだんプロっぼい顔をするようになってくる。その時、自分の初期衝動がものすごく大事に思えてくるんです。自分と美術との関わりを着ることで、自分を再編集する。自分へのメッセージという意味は大きいですね」(増田愛子)
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