マンガ選集「うみべのまち」
先鋭的な作風でマンガや絵本の表現を切りひらいてきた佐々木マキ(64)のマンガ選集『うみべのまち』 (太田出版)が刊行された。今も人気が高い「ピクルス街異聞」や「ばくのデブインコちゃん」など1967年から81年にかけての37作品が収録されている。
ナンセンスでアナーキーな作品は、雑誌「ガロ」に発表された当時から脚光を浴び、村上春樹初期作品のカバー絶や絵本でも人気を集めながら、作品はばつぼつとしか発表してこなかった。「子どものころ住んでいた町は貧しく、中学を出たら働かなければならないような環境だった。貧乏だからこそ生きていくための労働を軽蔑していた。今も自分の仕事が労働になるとやる気を失ってしまう」
マンガを書くスタイルは、紙に向かっての一発勝負。「自分の中からこんなものが出てくるのか、というのが面白い。100%分かっていることを措くのは労働です」
半世紀近くを経て、登場人物の服装さえも古びていない。「昭和10年ごろにピークを迎えた日本のモダニズムが好きでした。すでに洗練された欧州のモダニズムが基礎にあるから古びないのかもしれません」
今もカルト的な人気を持ち、「絵本のロングセラーもあって、好きな映画を見て、音楽を聴き、京都で静かに暮らすことはできる。それで十分。売れて欲しいと思ったことはない。絵本のアイデアだけ考えて、何もしないのが一番いい」。
半ば隠者のような生酒で自足しているが、新作は?
「若いころの僕のマンガは元気があって、今描いても負けてしまう。ばかばかしいギャグやアナーキーな世界は、自分の絵本のなかに取り込んでいきっつあります」 (加藤修)
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